千倉の海沿いから少し入った南朝夷に、高家神社(たかべじんじゃ)という社がある。知ってるか? ここは日本で唯一、料理の神様を祀る神社なんだよ。
祀られているのは磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと)。日本書紀によれば、景行天皇が安房を巡った折に、この神が堅魚(かつお)と白蛤(はまぐり)を見事に調理して差し上げた。天皇がいたく賞味し、以来、朝廷の食事をつかさどる膳部(かしわで)の祖となった——そう伝わる神さまだ。なぜ安房に料理の神様がいるのか。古くから安房の海の幸が朝廷に献じられてきた土地柄と、無縁じゃないんだな。
だから今も、料理人や食品にかかわる人の信仰が篤い。年に三度、5月17日・10月17日・11月23日には「庖丁式」が奉納される。烏帽子に直垂姿の庖丁師が、魚に直接手を触れず、包丁とまな箸だけでさばいて神前に供える古式の神事だ。一見の価値がある。
主祭神のほか、天照大神と稲荷大神も併せて祀る。所在地は南房総市千倉町南朝夷164。JR内房線・千倉駅から館山日東バスで「高家神社入口」下車、徒歩約10分。無料駐車場は15台で、大型バスも停められる。腕が上がりますようにと、包丁を握る人は一度手を合わせに行ってみな。
Photo: Jerry fish tkc (CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons